医療はAIに置き換わるのか?
AIで患者の命は救えるのか?
AIでなんでもできる時代。
医療業界にも、もちろんその影響はある。
そこで言われるのが「医療従事者はAIに置き換わるのか?」という話し。
医師も薬剤師も、他の職種も、AIで置き換わる未来があるのではないか?いや、もう置き換えるべきではないのか?
そんな声が聞こえてくる。
確かに、その可能性は十分に感じる。
私自身、薬剤師を10年して、20,000回以上の在宅患者訪問、80,000回以上の患者問題解決に向き合ってきた。
スマホやPCは確かに使っていたけど、いつも患者の前に立つのは生身の人間である私だった。だからこそ思うけど、「医療はAIに置き換わる」、この可能性は十分に考えられる。
(在宅訪問時の様子)
医療では「知識」は「最強の武器」になる。
医師なら、患者を診て診断をする。
薬剤師なら、患者を診て薬学的アセスメントをする。
これらには確かな専門性による「知識」が必要。
医師、歯科医師、薬剤師の大学は6年制。
医師、歯科医師には研修制度があり、薬剤師であっても生涯研修で学び続ける。
日進月歩の医療、薬剤もどんどん増えていく。
6年で必死に学んだ知識だけでなく、常に最新の医療情報を得なくてはならない。
我々医療従事者が、もし知識を得ることをやめたなら、患者を「無知」を理由に殺してしまうかもしれない。
だから我々にとって、「知識」は医療で戦う為の「武器」になる。
このことに反対する医療従事者はいないはず。
だとするなら、世界最強の知識を持った存在である「AI」は、我々医療従事者よりも病と戦う力があるのではないか?
そう考えても不思議ではない。
実際に私は、もうここずっと症例検討をAIと行っている。
もちろん、患者を特定するような情報は一切渡していない。
それでも、疾患や年齢、薬剤の情報をAIに渡せば、かなりの回答が返ってくる。正直、AIほどの回答をしてくる薬剤師は、ほとんどいない。
AIの知見は幅広い。薬剤の相互作用はもちろん、疾患に対するガイドラインの情報、国内外の最新論文まで網羅できる。公開されている医療データも、いくらでも参照が可能だ。
そのアウトプットを、数分、数秒で出してくる。
医療従事者がAIに置き換わる未来が、ありありと想像できる。
医療における「最強の盾」は、、、
では、我々医療従事者は必要ないのか?と聞かれると、必ずしもそうではない、と私は答える。
「必ずしも」がポイントだ。
「必ずしも」に込めた意味は、「今と同じことをし続ける医療従事者や医療は、AIに置き換わる」という意味。
言い換えれば「AIでは出来ない領域が、医療にはある」ということ。
「AIでは出来ない領域」が何かと言うと、「我々は人間である」ということがヒントになる。
我々が人である限り、いつかは最期の日が訪れる。
これは自論ですが、人は死ぬ為に生きている、と考えている。
必ず訪れる「最期」という未来に向けて、その日を後悔しないように、今を精一杯に生きている。
(高齢者施設への薬剤訪問の様子)
理想の最期を迎えるために、「今は死ねない」「こういう生活がしたい」「健康になってアレやコレがしたい」がある。
そのいつか迎える最期の日のために、「今どう生きたいのか?」への答えは、どんな教科書にも、どんな論文にも書いていない。
例えば、私が思う理想の最期は、私が笑っていて周りの人が泣いている、そうやって最期を迎えたいというもの。
あなたにとっての理想の最期はどうだろうか?
急に、理想の最期、なんてものを聞かれても困るかもしれないが、でも必ずいつか直面するし、そのときあなたが求める理想の最期は、私の理想とは違うはず。
生きて来た環境も、最期も迎えるときの状況も、価値観も何かも違う。
これこそが、いつか最期を迎える人に対して、我々医療従事者が向き合うべきところになる。
薬の相互作用や、疾患の診断、治療のガイドラインには「答え」がある。
だけど、患者の理想の最期(今は死にたくないも含めて)には「答え」がない。
答えが用意されているものに対してはAIは確かに最強だ。
だけど、答えのないものを考えて、想いを馳せて、導くことは、AIにはできない。
彼らは、「生きる」も「死ぬ」も経験することが出来ない。
言葉としての知識はあっても、そこに直面することはない。
我々医療従事者がやるのは、AIが出した「答え」を、今目の前にいる患者の理想の最期に対して、本当に価値があるのか?を患者と共に見つけ出すことです。
患者が人として最期を迎えるために、患者の人の尊厳を守るために、患者を守る盾になるのが、我々なんだ。
AIで患者の命は救えるのか?
それは「YES」だ。
「知識」こそが「最強の武器」だから。
患者の病や、薬の副作用を見つけ出すことに、AIは使えるし、AIはそれで患者の命を救える。
だけど、いつか最期を迎える人という存在の、尊厳を守れるのかと問われると「NO」だと答える。
そこには人である我々医療従事者にしか耳を傾けられないものがある。
タイトルである「医療はAIに置き換わるのか?」に対しては、今の「答え」を求める医療は置き換わる、
だけど、生きる意味、理想の最期を得るための医療は、置き換わらない。
私の考えは、我々医療従事者はAIを使って最強の武器を得て、そして医療従事者として盾になり、患者の命を守っていく存在にならなくてはならないというもの。
AIと敵対するのではなく、最強の武器として使い、盾となる存在になっていく。
それだできれば、我々医療従事者は、これからの世の中にも求められる。
もし出来なければ、AIで良い。
AIと敵対せず、武器にするためには、我々医療従事者は率先してAIスキルを身に付けないといけない。
AIが強い部分は、どんどんAIに任せて、我々は我々にしか出来ないことを。
そんな未来の医療を目指す同志は、ぜひ一緒に歩もう。
我々医療従事者にはそれができる。
著者
山口竜太(やまぐちりょうた)
株式会社ヘルスギルド 代表取締役
医療×経営×AI 実装プロデューサー
30事業のコンサルティング経験
各種学会でのシンポジスト経験
薬局運営1年で利益2,000万円増
減薬算定数で日本一を記録
【プロフィール】
21歳でアメリカ合衆国ペンシルバニア州デュケーン大学の薬学研修に参加。日米薬学生の医療に関する意識調査を行い、薬剤師学術大会にて発表。
2015年に大学5年生でありながら、第8回日本在宅薬学会学術大会に招待シンポジストとして幕張メッセで薬剤師系学会で初登壇する。
2016年、ファルメディコ株式会社に入社。新卒3ヶ月で在宅患者50名超を担当。最年少管理薬剤師に3年目で就任。1年で店舗利益2,000万円増を達成する。自身では300人超の在宅患者担当数を誇る。
管理薬剤師会議資料改訂、リスマネジメント資料改訂を行い全店に広める。
新卒採用担当チームとして、年間採用目標を半期で達成。新人教育担当も歴任、新卒2年目で在宅患者担当100名超えを何人も輩出する。
薬物動態学、漢方薬、バイタルサインなどの専門スキル、コミュニケーション、プレゼンテーション、コーチングやマネジメントの非専門スキルを活用して、20,000回以上の患者問題解決と処方提案を行う。服用薬剤調整支援料算定数で日本一を記録。
2021年、株式会社ヘルスギルド設立。薬剤師として幅広い知識と数多くの実践実績と、経営者としての多才な視点を持って、人材育成、マネジメント、リーダーシップ、顧客満足、処方提案、臨床薬学、話し方に特化した講演・研修を全国でこれまでに1,000回実施し累計2万人を動員。
2025年、選ばれる薬剤師の学校『R Pharmacicts’ University』を開講し、世界で通用する薬剤師の創出をしている。
2026年からは、大学薬学部の評価会議委員を務め、日本の薬学教育の発展にも寄与している。
【オフィシャルサイト】




圧倒的な現場の熱量と、AI時代を見据えた鋭い洞察に満ちた素晴らしい記事ですね。
日々、病院の運営やDX推進に携わる中で、「医療職がAIに代替されるのでは」という不安の声を現場で耳にすることがあります。しかし仰る通り、AIという最強の「武器(知識)」を持つことで、私たちは初めて、患者さんの「理想の最期をどう生きたいか」という答えのない問いに向き合い、その尊厳を守る「盾」としての役割に専念できるのですよね。これからの医療者が目指すべき美しい役割分担の提示に、深く感銘を受けました!
まだまだAIは完璧とは程遠いですし、今すぐAIに医療の仕事がとって変わるということはないと思いますが、100年後は分からないなと思うことがあります。その頃は社会構造自体が変わっているかもしれません。とりあえず今は、AIを使える側の人間になりたいと思ってます。